ユーロクッチーナ2016 デザインレビュー
Eurocucina 2016
Design Review
ノイエフォルム2016特別号
ユーロクッチーナ2016トレンドレポート。
アーバンカントリースタイル
キッチン
01
キッチンのトレンドは、2015年にすでにトレンドとして出始めていたものが継続しており、多くのキッチンブランドでは、モダンなデザインのエレガントで清潔感のあるラインとは対照的に、17世紀から18世紀を思わせる外観と雰囲気を再現する全体的なスタイルを独自に解釈したモデルを発表している。しかしアメリカでは、そのようなキッチンのデザインスタイルは、実は今でも主流となっている。多くのブランドで、天然木と装飾のついた大きめの取っ手を、多種多様なバリエーションで組み合わせている。白やクリーム色も定番色として人気がある。どのブランドも、インセットまたはアウトセットの前面パネルを設け、取っ手を強調している。ガラスまたは半透明の扉もよく使われている。
Photo:Nobilia York901
洗練された新しいシリーズ、Yorkでは、サテングレー色にラッカー塗装された木枠の扉で本物としての価値を体現している。さらに、籐籠またはワインラックといった基本ユニットだけでなく、ピラスター、くぼみ部分の被覆材やレーリングシステム、コーニス照明の飾り板、壁面のシェルフユニットといった周辺家具の多機能なデザインの選択肢も評価が高く、キッチンにカントリーの雰囲気を取り入れるのも想いのままだ。
温もりを感じさせるおもてなしを形作る、Scavoliniの最新キッチンでVuesseデザインのFavillaは、シンプルでありながら洗練されたスタイルに、おもてなしと親しみやすさというコンセプトを完ぺきに表現したイタリア伝統のデザインを取り入れている。また伝統的でありながらもモダンで都会的、古びているが洒落ている。
Photo:Scavolini Favilla
Favillaのキッチンプログラムは、キッチン周りの空間を個性的に演出するディテールを特徴とする。主な要素として、つや消しラッカー塗装の鋳鉄仕上げを施した高級感あふれる調理台と流し台、オリジナルのビンテージフード、洗練されたノブや取っ手、トラバーチンやグレーストーンの一体鋳造のシンク、カントリースタイルの現代版を連想させるFavillaアイランドなどがある。
Photo:Rastelli Tiffany
Tiffanyは現代におけるクラシックスタイルをアバンギャルドにアレンジしていた。
光沢仕上げとつや消し仕上げの扉、ネオクラシックなひらめきを生むモチーフ、高価なゴールド仕上げとシルバー仕上げ、明るめのクロムメッキやゴールド仕上げの取っ手、そしてピュアブラック色の御影石、又はゴールド/シルバー模様のCovelanoの白大理石の汚れ止めパネルがその美しさを示している。
イタリアのキッチンメーカーSnaideroは、建築家マッシモ・イオザ・ギーニとのコラボレーションをKellyで実現。
伝統的なデザインの原則が、時代に左右されないエレガントさを映し出す新しいスタイルに置き換わることにより、インテリアのクラシックなテイストを拡張する目的で見直され、モダンな華やかさに仕上がっている。Kellyのキッチンの前を、気づかずに通り過ぎることなどできない。贅沢でシックなこのキッチンは、モダンな流線型をあしらい、多くの細かなデザインのディテールが醸し出す家具の、時代を超えたクラシックさをオマージュしている。
ヨーロッパ家具の伝統であるクラシックな主流をしっかりと受け継ぎ、地中海の優雅さが持つ情熱的な上品さをうまく取り入れて、イタリアの熟練した匠の技に見られるディテールへのこだわりが表現されている。Kellyは、欲しいものに迷いがない眼識のあるバイヤーに訴える。まるでクラシックな美しさを愛しながらも、最高のモダンスタイルに囲まれていたい旅人のようだ。
Photo:Snaidero Cucina kelly Bianco Luce
Photo:Brummel Marmola
Photo:Brummel EGO
MarmolaはイタリアのBrummelのキッチンの中でもっとも意味のあるモデルのひとつ。目新しい冷たい雰囲気で飾られた、特別で高級感あふれるマットグレイ仕上げによって、時代を超えたスタイルのエレガントさを再確認させられる。
Brummelによれば、Marmolaは生活様式のアイディアを見事に表現し、エレガントさとシンプルさが革新や現代性と共存し、伝統を深く重んじている。
EGOは、エレガントな明るさとナチュラルなシンプルさを兼ね備えたクラシックなスタイルを特徴とする、Brummelのまったく新しいコレクションである。
材料や仕上げはクラシックさの探究に加え、質や強度にもこだわって選ばれているため、過度なスパイラルや彫刻、重厚なロココ様式の彫刻を巧みに避け、温かみのある大切な空間を残している。実際、EGOはその大きな柱で、他のキッチンと一線を画している。
EGOコレクションはアイボリー、ベージュ、マスクラッカーの他、ウェンジやマカッサル・エボニー、ローズウッド、カナレット・ウォールナットなどの貴重で厳選された素材のものを選ぶことができる。それぞれの素材の一部にはラッカーを使用し、わずかに金属も使用しているが、メインの素材と色のトーンを合わせている。
同じシリーズで、ダイニングエリアやリビングエリアで使える家具も取り揃えている。
統合された、
または隠すキッチン
02
リビングやダイニングエリアの一部として組み込まれる、目に見えないキッチンへのトレンドは引き続き根強い。アイランドキッチンから始まり、そのコンセプトが次第に進化していった結果、パッと見ただけではそれと気づかないようなキッチンが増えている。そうしたキッチンはインテリア空間を乱すことなく馴染んでいる。
クラシックな「ふくれ織」の布を彷彿するような繊細で立体的な質感に仕上げられ、光沢とつや消しの上品なラッカーがニュアンスを醸し出している。
扉には好みに応じて様々なノブや取っ手を取り付けることが可能だ。
透明なクリスタルジュエルのノブや、アーチ型をしたスチール製の取っ手がある。
他とは違うスタイルをつくり出す要素として、ディテールへのこだわりがある。扉は、ふくれ織をあしらった枠入りタイプと、滑らかなセントラルパネルタイプから選べる。これらのデザインはすべて、大理石と天然石の絶対的な存在感と相まって、エレガントなスタイルを求めた個性あふれる空間をつくり上げるのに貢献するものだ。
Bellagioモデルは、高さ256cmまで可能な柱や、さまざまな目的で用いるコンテナ類、そして電化製品といった、幅広くオーダーメイドできるモジュール性を、その他のScicモデルと共有している。
Photo: SCIC Bellagio
Photo:Bellagio Collection designed by Anna and Enrico Cattaneo
Photo:Snaidero Way – open and hidden
Photo:Snaidero Way – open and hidden
立体感のある素材、滑らかなシルエット、そして飾り気のないデザインの才能。いつものように、我々はふたたび新境地を開拓する研究に戻ってきた。
取っ手のないSnaidero Wayシリーズは、計算されたバランスとミニマリストな輪郭、さらに洗練された仕上げと色を用いたデザインである。
中央の大きな作業台はすべて、ストーン効果のあるセラミックで、扉や天板に立体感を出して作られている。これによりキッチンに一体型のような効果をもたらすのと同時に、優れた性能(高い耐熱性や汚れ防止、傷防止)も確保できる。立体感がありながら重厚な石のフレームに囲われて、作業エリアは人間工学的な快適さという点で秀でている。
Maistri コンセプトスタンド
2016年版のMaistriは、オープンスペースのソリューションとしてデザインされたキッチンプロジェクトに焦点を当てている。キッチンは機能的でありながらも美しくなければならない、つまり日常生活と美的体験を併せ持つものでなければならない、というものだ。
GIZAプロジェクトでは、木製のスライド式カウンタートップが付いており、作業台の機能を一瞬で出したり隠したりできる。GIZAおよびVIVAのアイランドキッチンでは、Lapitec(ラピテック)の新色モカで仕上げてあり、ロンドングレーとの絶妙なバランスを生んでいる。2つの企業間でしっかりと築き上げられたパートナーシップの賜物である。
Photo:Maistri Giza Lapitec
Photo:Martini Aria
Photo:Martini Aria
あくなき美と機能性の追求から、Martini Mobiliの新しいキッチンでは、クラシックな伝統の経験と紛れもない現代スタイルとの出会いが見る者を驚かせる。これも、パネルの象眼細工や装飾が施された扶壁柱などの古典的要素が際立ち、どういうわけかクリエイティブになるモダンで直線的なデザインと見事に融合することで、「時代を超えた」家具という新しいコンセプトの結果である。
ARIAはMartini Mobiliによる新しいキッチンである。Arbet Design設計で、家具のスタイルにおける、この独自のアプローチに沿ったものとなっている。オーク材で作られナチュラルな仕上げを施したキッチンには「曲線的な」ワードローブが付いている。
Photo:Valcucine New Logica System Blu
Photo:Valcucine New Logica System Blu
Valcucineシリーズは全体として、自然と幸福のアイディアにインスパイアされた健康的な楽園をイメージしてデザインされた。展示スペースはまるで庭のようであり、人は環境と調和して暮らす、という企業の健康的なコンセプトの象徴的な礎のひとつなのである。
人間工学と機能性を重視したモデルである新しいLogica System Bluは、隠された美であり、優雅に持ち上がり、スライドするソリューションによって快適さがもたらされる。
ブラック&スチール
03
クラシックな黒とハイテクなスチールの、多様なコンビネーション。スーパーモダンからクラシックな家庭的スタイルまで、システムキッチンから独立型キッチンまで、スタイルを問わず導入が可能。
深みのある色合いの天然木を使った外観と、前面にはステンレスを組み合わせた混じり気のないデザイン。
異なるユニット間に幅の広いセットバックを設けることで、秩序と平穏な感覚を生みだしている。
Photo: Arrital Acciaio
Photo: Office Gullo: Back and Grey
金属と木材を組み合わせたこのシステムキッチンは、4つの独立した要素に分けられる。キッチンの構造は、厚みがあり、手作業のブラシ仕上げによる黒色ステンレスでできており、光沢のあるクロムメッキの真鍮でできた優雅なフレームにはめ込まれ、グレーのラッカーで仕上げた固めのオーク材に施された木細工にマッチする。壁面は、ケータリング標準仕様の高性能のバーナーとスチール製の電気オーブンが装備された、プロ仕様の調理エリアとなっている。
シカゴ建築・デザイン博物館の栄誉あるグッドデザイン賞を受賞したばかりのSnaidero Operaが、まったく新しい姿にリニューアルして、ユーロクッチーナ国際キッチン見本市2016に展示された。
上質な素材への揺るぎない忠誠心と完ぺきなまでのバランス感覚、そしてシンプルな構造の魅力はそのままに、今回は新たに「工業的」なルックスに身を包み、本物の素材を用いてデザインを最優先している。
Photo:Snaidero Cucina Opera
Photo:Office Gullo Park Avenue Project
高性能なデザインと独自の美しさや装飾的な各部が特徴のキッチンだ。「自宅にあるレストラン」だが、単に「レストラン」を意味するものではない。すなわち、前述した調理機器とプロ仕様の設備だけでなく、根本的には「家庭」であるため、毎日の生活の中で容易に使えるよう、すべての要素に対して最大限の人間工学が駆使されている。
ステップシステムは、ウォールユニットのあるベースユニットと連なる木製パネルによってキッチンを完成させるもので、通常では使用しない空間を使用でき、調理に必要なあらゆるものを手の届く位置に保管できるようになる。
ステップシステムは実際に、毎日キッチンで使用する調理器具と道具の両方を保管するのに便利だ。垂直なエレメントとアルミ製のバーでできており、Veneta Cucine仕上げの背面パネルと棚もある。キッチンペーパーホルダーやグラスホルダーなどのアクセサリーを取り付けることも可能。アルミ製のバーは、棚から物が落下するのを防止する役割のほか、棚の下に取り付けることでおたま類を吊り下げておくこともできる。
Photo:Step System
Photo: Valcucine Genius Loci
まるで経験豊富な秘書のように、Genius Lociでは機能的であるという以上の秘密の空間が引き出しの中に隠されている。
Valcucineの引き出しに使用する新しいインテリアアクセサリーはモジュール式で、あらゆるものを手の届く範囲で整頓できる一方で、ユーザーの日々のニーズに対応する機能も兼ね備えている。
デザイン・ハイライト
04
今年のユーロクッチーナ国際キッチン見本市の中で、我々が選んだキッチンデザイン・ハイライトを発表しよう。共通点のひとつは変化である。つまり大型の機能的な要素を持つキッチンを動かすことによって、第二の空間での体験が生まれるというものだ。その他の要素としては、シンプルで且つ革新的なアプローチに優れているかどうかだ。
Photo:Rossana K-IN K-OUT
宙に浮いた基本ユニットは、光沢のあるスチール製のアシンメトリーな台座によって、床から持ち上げられている。これは革新的なRossanaのK-IN / K-OUTである。
Rossanaのコレクション全体にあるシングルレンジ・システムの確立が、意欲に満ちた進化における重要な一歩を踏み出すブランドの目的である。
ひとつのキッチンと、2つの異なる使い方、そして構造上の2つの特定システムに対するひとつの美学なのだ。
K-IN / K-OUTはRossanaが提案する新しい屋内/屋外対応のキッチンである。基本ユニットは、ミニマリストな土台の上に浮かぶ、簡素ながら強力な突出部分と意外なスペースを持ちあわせている。
アイランドキッチンとしての独自のソリューションであるK-IN / K-OUTは、完全に閉鎖された1枚のブロックのように見えるが、そこから可動式の面が縦横に伸び、キッチンの大きさを変化させる。2つの面をスライドさせることにより、カウンターを作業用としても、軽食用としても使える。
Photo:Rossana K-IN K-OUT
Photo:Cucina AIDA
この新しいキッチンを想起させる名前が、パルマの作曲家Giuseppe Verdiを称えるものとなっている。ヴェルディは1871年に、彼の最も成功した作品のひとつ、「Aida」で音楽界を驚かせた。全4幕から成るこのオペラは、1871年12月24日、カイロのスエズ運河開通記念セレモニーで初めて公演された。ヴェルディが書いた楽譜は、オーケストラの中でも金管楽器を主役として想定していた。
上記で示した構成は4つの要素からできている。その4つとは、エンペラドール大理石、不透明色のユーカリ材、スモークガラス、そして真鍮である。
Photo:Häcker
2016年4月ミラノ。Häckerはユーロクッチーナ国際キッチン見本市で、キッチンの幅広いコンセプトを紹介していた。「動くキッチン」をモットーに、キッチンにさまざまな動きをもたらす3つのプランを提案した。重要な点のひとつが「動くキッチン」のデザイン研究で、インテリア建築家・デザイナーのJochen Flakeが生活習慣の変化を反映し、非常に古い構造を新たに導入している。
Photo:Valcucine Artemica
直感に従って、アルミ構造の上に「無垢の」(接着剤で貼り合わせていない)素材を用いたArtematicaの扉に行きついた。それは終わりのないアイディアとの組み合わせが花咲く動きである。
いろいろな色のガラスを上品に使い、ラッカーと金属ラミネートを用いた触感を強く刺激する木材の仕上げまで、Artematicaは動きをより流動的に、より確実にするディテールにこだわってデザインされている。これにより、キャビネットの扉はより静かに閉じ、角を丸くしていることで最も高い安全水準を満たしている。
Officine Gulloは、サテンのハイゲージ・ステンレス製で光沢のある真鍮仕上げに、固いオリーブ材の取っ手がついた、プロ仕様の調理アイランドキッチンを発表している。片面にはプロ仕様でスチール製の換気付多機能マキシオーブンを装備している。これは、ケータリング業界用の標準トレーサイズであるGN1/1にも対応している。
反対面には調理台があり、ゆっくりと閉じる機能の引き出しが付いている。調理台にはパスタクッカーと、最大10kwの出力がある高性能バーナーが装備されている。中でも10kwのバーナーは、中華鍋での調理に最適である。
Photo:Officine Gullo